2014年1月17日

1月も気付けば折り返しですね。寒さが厳しくなっている今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか^^ 

ピースフルスクールでは、いじめ問題に対して対処療法ではなく根源的なアプローチをとることが大切だと考えています。
今回は、当プログラム開発時に参考とした‘いじめに対する「責めない」アプローチ’をご紹介いたします。 

♡いじめに対する「責めない」アプローチ♡
バーバラ・メイン氏とジョージ・ロビンソン氏が開発したこのアプローチ方法は、両氏が長年にわたって行った子どもたちの感情・問題行動の研究に基づいています。
いじめ問題は、誰かを犠牲にすることでグループのアイデンティティを形成し、優位に立とうとする行為なので、エンパシー(共感力)や思いやりといった価値観を育てることによってのみ、いじめている側の行動の変化を期待できると考えています。いじめが起きた後の調査や尋問では、なかなか問題の根底に到達することはできません。むしろ、いじめる側の取り調べを行うことにより、いじめる側が敵意を持ったり、裏切られたと感じるので、事態が悪化する可能性があります。それよりも、いじめられている側の感情に関心を向けさせることが重要です。
この「責めない」アプローチは、小・中学校だけでなく、大学や地域といった環境でも有効であるとして使用されてきました。
このアプローチは、以下の7つのステップを行うことを想定して開発されています。

 ♡7つのステップ♡
    いじめられている子どもと話し合う
先生は、いじめられている子がどんな気持ちかを聞きます。何が起こったかは、この段階では直接尋ねません。

    いじめる側との話し合いの場を設ける
先生は、いじめられている子を除く関係者全員との話し合いの場を設けます。この時、いじめを始めた子どもだけでなく、広くいじめに関わっている子ども(傍観者を含む)を集めます。

    いじめられている子どもの気持ちを共有する
先生は、②で集まった子どもたちに、いじめられている子の気持ちを説明します。この時、いじめる側を責めるのではなく、あくまでも感情を共有するにとどめます。

    責任を共有する
先生は、関係者全員にいじめ問題の責任があり、それぞれにできることがあることを共有します。

    いじめ問題を解決するために何ができるかを話し合う
先生は、いじめる側に対していじめられている子が今より幸せな気持ちになるためにはどうしたらいいか考えさせます。

    いじめ問題を子どもたちに解決させる
先生は、問題を解決する責任をグループ全体に一任し、話し合いを終えます。

    いじめ問題に関わる全員と話し合う
一週間後、先生はいじめられている子を含む子ども一人ひとりと話し合いの時間を持ち、問題がどのように変わったかを観察します。 

♡このアプローチの限界♡
7つのステップを行うことで、いじめ問題を解決し、いじめが起きにくい環境をつくることができますが、全ての状況でうまくいくわけではありません。
このアプローチを行うためには、先生と子どもたち全員が7つのステップを理解し、受け入れられる文化をつくる、すなわち学校全体が関与する必要があります。
実験調査によれば、いじめ問題に関して先生がきちんと7つのステップを理解しなかった場合、このアプローチが成功しなかったという例があります。
また、保護者に対しても協力が必要だという学校の方針を伝える必要があります。子どもたちに問題の解決を委ねることを理解していただかなくては、途中で大人が介入することになり、事態が悪化してしまいます。
それでは、どうしたらいいのでしょうか。

 ♡文化をつくるということ♡
新しい取り組みを導入しようとすると、様々なリスクに気付き躊躇してしまうことがあります。実際、このアプローチを効果的に行うためには、土台である文化がないと難しいです。どのような文化をつくればいいのでしょうか。

ピースフルスクールプログラムでは、この文化づくりを大切にしています。
例えば、自分の意見をきちんと持つこと、相手の意見をきちんと聞くこと、意見の対立は悪いことではないと理解すること、多様性を尊重し大切にすること、問題を話し合いで解決すること、みんなが安心できる居心地の良い空間を全員でつくる責任を持つこと。

このような力を子どもたちが身につけることで、いじめ問題を解決でき、いじめの起きないコミュニティをつくることができると考えています。
すぐに変わらないかもしれませんが、リスクや手間を考えて子どもたちのためになることを行わないことは勿体ないのではないでしょうか。

できる部分から文化づくりを始めていきたいと思っています^^

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